原子の世界

 暖かい空気に釣られて
 近所の公園へ向かった

 自転車で坂をのろのろ下っていると
 HやOの粒が
 するりと通り抜けていった

 公園のベンチに座ると
 黄色の蝶が顔の周りをうろつき始めた
 何度 手で振り払っても
 すぐに戻ってくる

 正面にいる二人の男の子は
 手をつないでぐるぐる回っている

 母親がやってきて
「そろそろ帰るよ」なんて言いながら
 二人の間に割り込み
 水になって消えた

 空に雲のなかった春の日